「出口」を担う、いわぎ物産センター
いくら質の良いレモンが収穫されたとしても、もし必要としているお客様のもとに届けられなければ、レモンによる島おこしを実現することはできない。
岩城島でその「出口」の役割を担うのが「株式会社いわぎ物産センター」だ。
いわぎ物産センターでは、レモンの果実の販売、100%果汁やマーマレード、シロップ、専任パティシエが焼き上げるレモンケーキなど、数々の加工品の開発/製造/販売を行っている。
現在、そのセンター長を務めるのは大本孝則さん(49)だ。
中学校時代はテニス部キャプテンで「部活の時間は筋力トレーニングだと、毎日磯に行って潜ったりしよった」と笑って話す。そのゆたかな経験があるからだろう、観光で岩城島を訪れた子どもたちには、磯で遊ぶのがおすすめだと教えてくれた。高校進学時に島外へ。大学生、会社員を経て、26才で岩城島へUターンした。
いわぎ物産センターのお客様はほとんどがリピーターだそうだ。
「イベントなどで一度買った方が贈答用にしてくださる、そして贈答用で送られた方がまた自分で買ってくださる」、と大本さん。
よいものだからまた買うし、よいものだから贈り物にできる。岩城島のレモンの輪は今も昔も、お客様の手から手へとつながり広がる。
ノーワックス・防腐剤不使用
大本さんの案内で、愛媛県内はもちろん、関東など各地で給食に使われるレモン果汁の瓶詰め作業など、工場内の様子を見学させていただいた。
レモン普及が進められた当初から、ノーワックス・防腐剤不使用を徹底している岩城島のレモン。皮ごと安心して使えるのが特徴で、いわぎ物産センターでも果肉や果汁はもちろん、りんごのようにくるくると機械で薄くむかれた皮は、自社製ママレードに使用されたり、各地の製菓会社の菓子の原材料として出荷されたりと大活躍している。
ちなみに岩城島の子供たちが給食で食べる「レモンポーク」も、いわぎ物産センターから提供されるレモンの搾りかすを飼料に混ぜて飼育されているそうだ。
互いに寄り添い働く
「ここではレモンの出荷作業をしています」
出荷スペースでは、女性たちがグループに分かれ作業を進めていた。古川さんの作業所のように、ここにも、レモンの良い香りが漂っている。
ひとつのグループは販売店用の袋詰め。電解水を使用して洗浄・殺菌したのち、手作業で同じくらいの直径のレモンを二個ひと組みにして並べ、順番に封入する。
もうひとつのグループは出荷されたレモンの選果。キズや汚れ、大きさを目で見てチェックする(いわぎ物産センターでは量ではなく品質でレモンを評価し卸値を決めることで、レモンの品質向上をはかってきた)。どちらもきめ細やかさと作業への持続力が要求される仕事だ。
従業員のほとんどが岩城島に暮らす主婦だと言ういわぎ物産センター。そう言えば最初にお話をうかがっていた事務所では赤ちゃんの声が聞こえた。
「働いてもらえたら助かりますし、赤ちゃんを見ると他の従業員も和みますから」、大本さんは言った。
ここでは一度働き始めたら、出産、子育ての時期を通し、長い年月働き続ける人ばかりだそうだ。60才の定年の後も再雇用を希望する人が多い。
家庭生活のリズムに合わせて互いに勤務時間を調整し合うことも。「ありがたいです」と作業中の方が教えてくださった。